高瀬舟 [takasebune]

高瀬舟 [takasebune] / YUKICHI

Guitar : YUKICHI
Photo : 奥山和洋 [Kazuhiro Okuyama]

Composer:YUKICHI
Mixing・Mastering:田辺玄 [Gen Tanabe]
Movie:奥山和洋 [Kazuhiro Okuyama]

高瀬舟:森鴎外著
題名考案・文章引用:Daishi


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高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。
徳川時代に京都の罪人が遠島を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷へ呼び出されて、そこで暇乞をすることを許された。
それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪へ廻されることであつた。
それを護送するのは、京都町奉行の配下にゐる同心で、此同心は罪人の親類の中で、主立つた一人を大阪まで同船させることを許す慣例であつた。
これは上へ通つた事ではないが、所謂大目に見るのであつた、默許であつた。

庄兵衞は只漠然と、人の一生といふやうな事を思つて見た。
人は身に病があると、此病がなかつたらと思ふ。
其日其日の食がないと、食つて行かれたらと思ふ。
萬一の時に備へる蓄がないと、少しでも蓄があつたらと思ふ。
蓄があつても、又其蓄がもつと多かつたらと思ふ。
此の如くに先から先へと考へて見れば、人はどこまで往つて踏み止まることが出來るものやら分からない。
それを今目の前で踏み止まつて見せてくれるのが此喜助だと、庄兵衞は氣が附いた。

次第に更けて行く朧夜に、沈默の人二人を載せた高瀬舟は、黒い水の面をすべつて行つた。
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